松任谷は、コロナ禍での心境について「幸い、毎年行っている苗場のライブが緊急事態宣言の直前に終えることができたのですが、それ以降、私の知り合い、さまざまなアーティストもほとんどライブができなくなり、そういう状況を見るにつけ、私自身も3月、4月はパニックのような状態も味わいました。その後は世界中がこのまま朽ち果てていくんじゃないかという恐怖とか、すべてのことにやる気をなくす落ち込んだ状態を生まれて初めて体験しました」と率直な思いを吐露。
続けて「でも、夏少し前くらいに、自分の性(さが)なんでしょうね、創作意欲がわいてきて。未曾有の年をなんとか記録したいっていう欲求も出てきたんです。シンガーソングライターですから『歌を作らなくちゃ』と思って、レコーディングに入りました」と告白。「母が、この春に100歳を迎えたのですが、施設におりますから、会いたくても会えない、お祝いしたくてもできない。そこでコロナということについて、改めて残酷さを感じました。その代わりに、100年前って、一体どういう年だったのかと調べましたら、1920年は、今とびっくりするほど、状況が似ているんですね。そこで『1920』という曲を作りました」と明かした。
母との思い出について「大正生まれで、エンターテインメントが大好きだった。私も子どものころからさまざまなものを見せてもらえて、歌舞伎、新派・新劇、宝塚…。自分で言うのもですが、ユーミンという、今の私(になるため)の英才教育を施してくれました」とうれしそうに語った上で「アルバムには、いろいろな表現の曲が収められていますが、このキャリアになっても、なんとしてでも音楽的成長を示すんだということを感じていただけたら…」と言葉に力を込めた。
今回のアンバサダー就任を受け、松任谷の楽曲「春よ、来い」を松任谷、平原綾香、子どもたちなどが歌いつなぐ、日本全国のライブ関係者に向けた応援ムービー「ライブのリレー」を、同プロジェクトの公式サイトとYouTubeで24日より公開。三遊亭小遊三、森山未來、ナイツをはじめ、音楽・演劇・ダンス・伝統芸能などのさまざまなパフォーマンスがひとつにつながる動画となっている。
コロナ禍で困難に直面している表現者と関係者に対して、松任谷は「全国にたくさんの表現者、それを支えるスタッフの方々がいらっしゃると思います。ライブをあきらめない、これからも送り続けるというのが必要だと思いますし、それを楽しみにされるお客さまの心も必ず復活されると思います。私も身を挺(てい)してエールを送りたいと思います」と呼びかけていた。
記者会見にはそのほか、文化庁次長の矢野和彦氏、能楽師の野村萬、同プロジェクトの実行委員長で浜松市長の鈴木康友氏も出席した。
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